保全命令には、仮差押と仮処分があり、仮処分には、係争物に関する仮処分と仮の地位を定める仮処分とがあります。訴訟では、権利関係の確定を目指しますが、保全では、緊急性があるために仮の権利関係を目指すことになります。

仮差押は、債権者の将来の金銭債権の実現を確保するために、債務者の財産の現状を維持するものです。金銭債権は、通常判決を得て、強制執行しますが、判決を得るまでに時間を要するため、その間に債務者が財産を処分すると強制執行ができなくなることから債務者の責任財産を処分できないようにすることが仮差押です。例えば、AがBにお金を貸しており、Bがお金を返さない場合、B所有の不動産があるとして、家屋の処分をできないようにしておく必要がある場合にAはB所有の不動産を仮差押しておくのです。

係争物に関する仮処分は、仮差押と同様、将来の強制執行を保全するためのものですが、金銭債権を保全するのではなく、特定物に対する引渡請求権等を保全することを目的とするもので、将来の非金銭債権を保全するために、債務者の財産の一部を処分できないようにするのが係争物に関する仮処分です。例えば、建物の明渡請求権を保全するためにその占有状態を固定しておくために占有移転禁止の仮処分をするのです。

仮の地位を定める仮処分は、債権者による将来の執行を保全するのではなく、争いのある法律関係について、現在債権者に生じる著しい損害又は急迫な危険を避けるために暫定的な措置をするものです。例えば、交通事故の被害者が事故のため仕事ができず、生活に困窮している場合に、将来の権利の確定等を待っていては被害者の現在の生活ができない場合、将来の給付判決が確定したとすれば得られる法律状態を現に得させ、加害者から被害者に毎月一定額の金銭の支払いを命じるものです。

これらの保全命令については、審訊という手続を経て審査されますが、通常債権者には担保として金銭を供託等する必要があります。